予言

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 幼児教育センターの同じワークグループに所属している典明が資料館に展示されていた注連縄の捲かれた岩を眺めていた瑞貴に声を掛けた。 「テンメイこれが神様って、昔の人っておかしなこと思いつくもんだね」 「これがご神体かあ」  と瑞貴が眺めていた岩の横にあるモニターに目をやり典明は、そこに表示されている説明文を読み始めた。  説明書きによると、瑞貴達の背丈ほどの大きさの岩は21世紀頃まで神様として神社に祀られていたご神体だったそうだ。  幼児教育プログラムの中にも歴史文化のカリキュラムとして宗教や信仰を学ぶ機会はあった。  自然崇拝の原始宗教というものがあったことは授業で習ったが、神と信じられていた物を目にするのは初めてのことで。  瑞貴も典明も何故こんな物を神と崇めていたのかと、前時代の人々の神経を疑うしかなかった。 「石になんか祈ったってお前らがΩからαに変わることなんてないぞ」  聞こえた言葉に瑞貴と典明は振り返り、そこにいた人物を見て顔をしかめた。  センターでは種別ごとにワークグループが分かれている。  ホームクラスは年代ごとに分かれているが、Ωとαとβでは授業を受ける教室が違う。  瑞貴達に嫌味な笑みを浮かべて言葉を投げつけて来たのはβグループの男児だった。  瑞貴達のクラス50人の内35人の生徒がいる最大グループの一人だ。     
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