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瑞貴の長い睫毛に縁取られた大きな黒目がちの瞳に見つめられるとカグヤの心臓は早鐘の様に打つのを止められない。
美豆良に結い上げ晒された白く細い項に顔を押し当てたくなる。
これまで宛がわれた女達には一度も感じた事なかった欲情に身体が熱くなる。
瑞貴の肌に触れたくて仕方がない。
抱き締めただけで失神させてしまったので迂闊には触れられないのがもどかしいとカグヤは思っていた。
「だから、従者の住む家とか決まっているのだろ? 今日祭儀場とか色々案内して貰ったけど、何処に寝泊まりするのか聞かなかったから」
瑞貴が言い募る姿がこれまた良いとカグヤは思わず顔がにやけそうになる。
瑞貴は声まで愛らしい、とカグヤは瑞貴の声に聞き惚れる。
カグヤにこれまで宛がわれて来た女は氏上の親族の娘達や養女にした娘達だった。
王の妻である母もまた氏上の娘である。
氏上の差し出す女達を突っぱね続けたら、今度は侵略した地の女達を拐って押し付けて来た。
寝首を掻いてくれと言っているようなものである。
王の後宮とも呼べる場所で育ったカグヤは母も腹違いの兄弟達も祖父も信用していない。
たまたま王の長男として生まれ太子と定められたが、この時代長子が跡継ぎになるとは決まっていないのである。
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