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母親の身分が高い者という条件があるだけで、他の兄弟の母も同じ身分の氏上の娘であるから
カグヤの廃嫡はいつでも起こり得ることである。
そして王太子という身分であれど思い通りになることは少ない。
氏上には太子は政り事に関わるべきではないと言われ、クルソー侵略の際に民は生かすべきだというカグヤの主張は聞き入れられなかった。
更にはクルソーに行かぬ様にとヤマトとの国境に派遣されたのである。
ヤマトとの小競り合いにケリを着け急ぎクルソーに向かった時には制圧は終わり略奪の限りを尽くされた上に村は焼き払われていた。
幼き頃より夢見ていた伝説の楽園の子孫達が作った今の世の楽園を一目見ることすら叶わなかったのだ。
「お前は此処で我と共に暮らせば良い」
「此処でって、宿直は当番制とかじゃないのか?」
瑞貴は室内の隅に控えている従者を見ながら言う。
「シュクチョク? トウバンセ? ミズキの国の言葉は面白い。だが、全然分からん」
「ああもう分かったよ。此処で寝ればいいのだろ? 藁はないのか?」
「藁など何に使う」
「寝るには潜る藁が必要だろ」
「筵がある」
カグヤは寝台に敷かれた筵を手で叩いて言った。
「それは太子のベッドだろ」
「カグヤだ」
「カグヤ? ベッドの事か? それは太子のカグヤだろ」
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