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穴の中
此の世界に来て、俺は初めて寝る為の衣服を見た。
だけでなく、手渡され着替えて寝る事になった。
寝衣は前合わせの裾の長い着物で、裾を引き摺りそうだったが腰に巻く紐帯で長さを調節して貰った。
元々この寝衣は長く作られているのだろう、同じ物を着た太子も帯で調節していたから。
「ミズキは誠小さい」
俺に寝衣を着付けたカグヤが目を背けながら言う。
従者の俺が主に着付けられているという前代未聞であろうな事態に、太子付きの従者も見なかった事にしようとしているのか顔を背けている。
「俺が小さいのではない。イサの民が大きいのだ。俺はクルソーでは普通だった」
「そうかクルソーの民は斯様に皆小さいのか」
俺の着ていた絹の衣を脱がせた太子は、俺が下帯を巻いている事に驚くという失礼ぶりだった。
聞けばイサでは下帯を着けるのは成人男子のみらしい。
クルソーでは山に入る齢の6、7歳から下帯を巻くのが普通だが。
それでも俺が成人していることを告げると太子は驚愕していた。
そういえば潔斎場で身体を洗われた時も従者が変な声を上げて俺の成人の証である逸物を凝視して、急いで下帯を取りに行かせていたか。
「では寝るぞ」
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