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太子が俺の手を引く。
「俺はその茣蓙に……」
俺は地面に敷かれた食事をした茣蓙を指差した。
「此の寝台は二人で寝ても壊れぬ様に出来ている」
それはそうであろうが、俺が気にしているのはそんな事ではない。
俺はナギにより身体を開かれΩの性を知らされてしまった。
正直斯様な立派な体躯を持つ男と密着して寝て大丈夫なのだろうか。
太子の真意が分からない。
先程どういうつもりでいるのかを確かめようとしたが、話があらぬ方向に行ってしまい確かめられなかった。
子を作る義務がない事が分かったのは良かったが。
俺と太子が寝台に横になると従者が衣を広げて掛けてきた。
掛けて寝る為だけの衣がある意味が分からない。
従者はそのまま室内の四隅の灯火を吹き消して回り、最後その場に座る気配がした。
灯りが消えると室内は一気に暗闇へと転じる。
だが天井付近には小屋根の下に天窓があるので、目が慣れれば闇も薄らぐであろう。
室内は掘った地面の穴に丸太を張って壁にしている地下構造で、藁が無くとも寝られない寒さではない。
ぎしりと音がして太子が身じろぎする気配が振動と共に伝わってくる。
横向きに半身を起こした太子の掌が俺の頬を撫でる。
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