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数の多いβが理性を失うと社会秩序的に危険な為、Ωは抑制剤を服用しない外出を許されていない。
もっともΩはαの子を産む以外の職を認められていないので外出する理由もない。
同級生や上級生達と共に両開きの扉の向こうへ足を踏み入れた典明は、室内の調度品の豪華さや美しく並べられた料理や、あちらこちらに飾られた生花の豪奢さではない、その場を圧倒するαのフェロモンに驚愕し気圧され目眩を感じた。
ここにいるのは皆成人した大人のαだけである。
財を築いた力のあるαだけと言っても良い。
約50名ほどのαが人種を問わず集まっている。
普段は百名ほどが集まるのだが、今回参加した典明達の出した条件が厳しい為、招待されたαが少ない。
「プライベートハウスを持ちたい理由を聞いても?」
典明は今日何人目かの同じ質問をしてきた男性を見上げた。
典明の出した条件はαが自分の住居に訪ねて来るのではなく自分がαの部屋を訪ねたいだった。
「妻問いシステムにするとマンションから出る機会が無くなると聞いたからです」
典明は他の男にしたのと同じ回答を繰り返す。
この後の男の切り返しも予想がつく。
「αがΩの許に通うのはΩの安全を考えれば理に適ったシステムなんだよ?」
やはり予想通りの切り返しだと典明は冷めた目で男を見る。
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