見合い

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 パートナー達が抑制剤を服用する事を嫌い、妊娠出産を繰り返すだけの外出することのない生活を長年送ってきた。  妊娠時の診察も出産もマンション内にある産科で行った。  ただでさえΩは社会と接する機会が少ないまま成長する。  外に出て良いと中年になってから言われても、外の常識を知らない。  空気清浄機を通さぬ外気すら長年吸ったことがなかったりする。  Ω専用マンションはフェロモンが外に漏れださないよう管理されている空間だ。  先輩の知り合ったΩは誰も訪ねることのない部屋に閉じ籠っていても三か月に一度の周期で起こる発情期に肉体を持て余し気が狂いそうで、いつもマンション内をふらついて自分を抱いてくれと他の部屋を訪れるαに取り縋っていたのだった。  先輩はパートナーのαの持っているタブレットでΩがアクセス出来ないネット情報にアクセスした事があるそうで。  外の世界にはβ達が利用している風俗店があることや、βも男同士で肉体関係を持つことがあると知ったそうだ。  その情報を中年のΩに伝え外に出てみる事を勧めたが、今まで一度も出たことがないので外に出るのは無理だと答えたという。  もしもの時の事を考え、外の世界を知る機会を得るべきだと典明はアドバイスされた。     
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