仕来り

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仕来り

 俺は煮炊き小屋の前にしゃがんで借りた刃物で薪を削っていた。  太子と寝てしまったことがあまりに気まずく、日の出前に館を抜け出したのだ。  太子の館の周りを警護する近衛に出くわし微妙な顔をされたが何も言われはしなかった。  絶対にあれはバレていると思う。  しばらくエリア内でうろうろした後に空が白み始める頃、女達がエリアに入ってきたのでついて行って煮炊き小屋で刃物を借りた。  小屋の中からは女達のおしゃべりや調理をする物音が聞こえ賑やかだ。  朝から米を炊くらしい。  本当にここは毎日が祭りなんだなと思う。 「こんなもんかな」  草鞋と違い一度作ると長く使える箸は頻繁に作る物ではなかったので余り上達していないが、そこそこに使える物が完成したと思う。  俺が箸の出来栄えに一人満足していると、王族の館群の門から近衛が飛び出して来るのが目に入った。  近衛は辺りを見回し俺と目が合うと一目散にこちらに駆け寄ってきた。 「こんな所にいたのか! 太子が探しておる! 早う参れ!」  近衛に怒鳴られ腕を掴まれ俺は 「ちょっと待ってくれ、これを返さねばならん」  と刃物を差し出した。 「すわ!? その得物をどうするつもりだ!?」     
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