狩人

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狩人

 俺が此の里に来たのは多分9年前。  なんで多分なのかと言うと、此処にはカレンダーなんて物がないから正確な日付も月も分からないからだ。  来た当初は村人の言葉も聞き取れず言葉も通じない状態だった。  此の里の村人達は空模様や気温の変化しか気にしていない。  晴れれば土を耕し雨が降れば藁を編む。  暖かくなれば種を蒔き、寒くなれば機を織る。  今が紀元暦の何年なのかも分からない。  鉄を使っているから紀元前ではないだろうと俺は勝手に予想している。  9年前のあの日  遠足で行った民俗資料館でテンメイ達とはぐれ迷子になり、館内を彷徨う内に気付いたら此処に来ていた。  正確には此の里の外れにある山の中だ。  この里の言葉を理解出来るようになってから知ったのは、俺が現れた山は神域とされ神隠しが起きると伝えられていて村人は誰も立ち入らない場所だという事だった。  麓には身長を超す長い木の杭が数本打ち込まれ縄が張ってあり、そこから先は立ち入り禁止となっていた。     
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