黄昏時の少女

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 彼女が逝ってしまってから、二十年ほど経った。  俺は、医者には結局なれず、中学校の保険医になった。  そして、彼女のような自殺者が出ないように、生徒のカウンセリングにも力を入れている。  あれからというもの、女性と交際もせず、ただひたすらに仕事をしていた。  そして、養子として女の子を一人、0才から我が子のように育てている。  家に帰ると、その子が制服にエプロンを付けた姿でキッチンに立っている。 「あ、お父さん。おかえりー。ごはん今できたよー」  俺の帰宅時間に合わせてご飯を作る娘に、俺は感謝をしきれない。  そして、俺は、なぜか彼女に面影がある娘を見て、あの日の言葉を思い出す。 『子どもができたら、私と同じ名前使ってね。名前は――』  俺は、彼女のことを思いながら、娘に笑顔を向けるのだった。 「ただいま、茜」
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