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周りを赤く夕日が照らす夕刻。
俺は、防波堤を自転車を押しながら歩く。
中学三年の俺の腰ほどまでの段差の先、テトラポットとそこに広がる海が、赤く輝いていた。
「なぁに黄昏てるの?」
唐突に後ろから声をかけられて、俺は振り向いた。
そこには、黒い短髪で、中心に星が書かれた灰色のTシャツ。そして、その上に羽織る藍色のパーカーとひらひらしている夜色のミニスカート。活発そうな深い紺色の瞳。そして、動きやすそうな使い古されたようなスニーカー。
「別に」
俺は、彼女にそう短く返した。
すると、「ふーん?」と小首をかしげた後、防波堤の段差を登り、俺に合わせて歩き始めた。
「君さ、この辺に住んでるの?」
投げかけられた無邪気な問い。
俺は、無愛想に頷いて、歩みを進める。
長い、長いこの防波堤の道を歩く。
家はこの防波堤を進んだ先で、それまで波の音を聞きながら帰るのが、俺の日課だった。
しかし、今この隣にいる彼女のおかけで、波以外の雑音が混じり始めている。
「むー無愛想ねー。ちょっとくらいお話に付き合ってくれてもいいじゃん」
防波堤の上から頬を膨らませながらこちらを見る彼女は、どうやら拗ねているらしい。
「あんた」
「お? 話す気になった?」
少し嬉しそうにはにかみながら、彼女はこちらに振り向き、絶妙なバランス感覚で後ろ歩きを始める。
腕を後ろに組んで、こちらを見下ろしていた。
そんな彼女に、俺は一つ忠告をしてやろう。
「さっきから、パンツ見えてんぞ」
そう。俺の腰ほどの段差に上った彼女は、ミニスカート。季節は秋というのと、海が直ぐそこにあるため、風は吹く。
そのため、彼女の下半身にあるヴェールの中が、俺からは容易く見えるというものだ。
「あ、見てたな? えっちぃ」
そんな忠告をされても、恥ずかしそうにするどころか、どこか俺をからかうようにしてこちらを見る。
こちらとしては、名も知らない女性の下着なんて興味もない。
まして、この秘密のヴェールに隠された白い何かが気になり続けているなんてことは断じてありえんそうありえん。
などと、自分に言い訳をしていると、段差を降りて、俺の顔を覗き込んできた。
「あはっ! 意外にむっつりさんなのかな?」
背伸びをして、俺の頭半分まで顔を近づけてくる。
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