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とある休日、俺はすることもなく防波堤に来ていた。
ここにいれば彼女に出会えるから、というのは偽らざる本音である。
ここ最近、親よりも話している彼女に、どこか心惹かれているのかもしれない。
俺は、少し高鳴っている鼓動を抑えながら、青い空と青い海を見続ける。
しかし、彼女は訪れず、コンビニ一回行ってあったかいミルクティーと肉まんを購入し、戻ってくる。
そして、待ち続けて、日が赤くなり始めた頃。
「おろ? どうしたの?」
待ち望んでいた声が、後ろから聞こえてきた。
防波堤の段差に腰かけて、テトラポットに足を置いていた俺は、顔だけで後ろを振り返る。
そこには、少しの段差下から、不思議そうに見上げている彼女がいた。
「いや、暇だったから」
俺がそういうと同時に、彼女は俺の隣に登って座る。
「受験生が何を言っておりますか」
「受験生でも休息は必要だろ?」
そう言って笑う。
「君、もしかしてずっとここに?」
少し手先が赤くなっているのを見て、彼女は心配そうに言った。
「あーえっと……まあ」
濁そうとしたが、結局頷いたしまった。
それに呆れたようにため息を吐きながら、彼女はテトラポットの間で足をぷらぷらさせる。
「君はさー、友達とかつくりなよ」
「いないことはないけど、そこまで一緒にいたいわけじゃない」
「おや? じゃあ、私とは一緒にいたいの?」
少しいたずらっぽく目を細めながら、俺の顔をのぞいてくる。
俺は、そっぽを向きながら無言になってしまった。
それを見て、彼女はまた吹き出す。
「あっはは。拗ねないでよー」
笑いながら、また時間が過ぎていく。
そこで、俺は一つの疑問が頭をよぎった。
彼女は、果たして何歳なのか。
別に、女性の年齢を気にしているわけではない。だけど、もし、俺と近しい年齢の場合、彼女は学校に行っているはずだ。
「あんたは、学校行っているのか?」
俺がそういうと、彼女は口を閉ざし、笑っていた表情は、徐々に重く寂しいものになっていく。
「……行ってない」
彼女は、沈みかけている夕日を見つめながら、ポツリと呟いた。
その横顔は、先ほどと一緒で、寂しそうな表情。
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