たった一つでいい。

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思えば自分は、多分それなりに幸せだった。 親は二歳の頃に火事で死んだらしいが、遺品も写真の一枚も残らず焼け落ちた中、両親の顔も覚えてない今となっては、この世に産み落としてくれたことを感謝こそすれど悲しく思う気持ちは無かった。 何処か他人事のようにしか考えられないのだ。 親の反対を押し切り、家と縁を切って結婚した両親であったから、残された俺を引き取る親戚なんてものも居なくて施設に引き取られた。 施設での暮らしは世間一般的に見るとあまり良いものでは無かったのだろうが、生きているだけで幸せなのだ。多くは望むまい。 俺は現状に満足していた。 施設の職員にまだ物心つかないうちに軽い悪戯をされたことで自分の性癖が歪んでしまったことも、只の気紛れで暴力を受けた時も、学校で”親無し”と揶揄され虐めを受けた時も、友人だと思っていた奴に裏切られ、多くの人の信頼を失い後ろ指を指された時も、いつか誰かが迎えに来てくれると信じ続け、遂には施設を出る年齢になってしまった時も、街行く幸せそうな二人に、無い胸が痛んだ時も、案外人は孤独でもそれなりに生きていけるのだと気付いた時も、俺はそれなりに幸せだった。 だって生きているのだから。 施設に引き取られたばかりの頃、施設の女職員に夜な夜な呼び出され、服で見えない所を殴られたり、まだ皮の向けない性器を気紛れに弄ばれたりした。 小さな子供ながらに嫌がって泣こうものなら女がいつも吸っていた煙草を素肌に押し当てられていたので、俺は只々黙って従う事しか出来なかった。 それは2年程続いていたが、ある時行為中に施設長の男に見つかり、女はクビになった。 女はクビになったが、俺は新しく施設長の”玩具”として扱われるようになった。 女は俺に対してどちらかというと暴力的な扱いをすることが多かったが、施設長の男は違かった。 彼は初め、俺の性器を口に含んだり自分の性器を俺の口に含ませたりしていた。 そいくらか経つと、男は俺の尻に何かを入れるようになった。 小さな子供の尻にバイブを突っ込んで喜ぶような奴はまごう事なき変態だと今の俺ならば断言できるが、その頃は何も知らない子供で、されること全てが当たり前で、反抗するという事を知りもしなかった。
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