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その後、友人だと思っていた男に呼び出されて、「お前がやったって事にしてくれて助かったよ。お前も俺のこと好きなら俺の役に立てて幸せだろう?」と、そう言われた。
悲しい、とは思ったが腹立たしくは思わなかった。
彼は誤解していたからだ。
俺が伝えた好意は、飽くまで友人の範囲であり、彼の為に自己犠牲を払っても良いと思える程の物ではなかった。
けれど、彼はきっと誤解していた。
俺の伝えた好意は、とても重く重要なもので、自分の為に利用できるものだと感じていたのだろう。
ならばそれはきっと俺が悪かった。
俺の伝え方が悪かったのだろう。
ならばこれは俺一人が悪かったのだ。仕方ない。
人よりも捻くれていた自覚のある俺でも、いつか誰かが迎えに来てくれるのではないか、と信じていた。
俺を無条件に愛してくれる”家族”が俺にもできるのではないかと、そう信じていた。
信じ続けて、俺は施設を出なければいけない年齢になった。
迎えは来なかった。
その時は悲しく思ったが、長く掛からずそれも当たり前だったと理解した。
人よりも価値のない俺が、”待っていれば”なんて受け身でいたとしても、誰も必要としてくれる筈がなかった。
そして同時に悟った。
俺には未来永劫、無条件に愛してくれる”家族”は絶対に出来ることは無いと。
俺は世間一般でいうゲイであるらしい。
まだヘテロであれば望みはあった筈だ。
こんな価値の無い男であっても、もしかしたら愛してくれる女性がいて、豊かではなくとも暖かな家族を築けたかもしれない。
でも俺はゲイだ。
暖かな家族なんて作れる訳も無ければ、愛してくれる相手とも出会うことは無いだろう。
俺は受け身しか出来ないし、俺自身面白味も、取り柄も何もない男だ。
家族も無ければ帰る場所も無く、長所も無ければ稼ぎも無く、取り柄も趣味も何も無い。
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