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「変身完了!」
「さ、寒い……」
ミサりんは黒い生ハムの衣装を身に付けながら、右手にはスワロフスキーのボールペン、左手には原稿用紙を持っていて、スーパーのチラシ手裏剣と、子供の交通安全を守るライトセーバーらしからぬ棒を背中にしょっている。
僕はなんとかレンジャーのベルトをスーツのベルトの代わりにつけて、上はジャケットを着させてもらえず、白いYシャツに恥ずかしいワッペンをつけられている。腕には変身リング。靴はアルミ素材っぽいブーツ……。
僕の……尚サマとしての威厳が。
しかも、僕の剣は厨二病患者のような二刀流かつ、ドクロとよくわからない模様が施されているやつだった。
「ミサりん、これは……」
「気合い入れすぎだったかな?」
「……いいの、思い浮かんだ?」
「ん?」
「小説……書くんじゃなかったの?」
「あ、そっか! あははは、変身に夢中だったわごめんごめん」
「…………がーん」
――「出たな! 正義の味方め! オレが成敗してやる」
「!?」
するとそこに、僕に向かって現れた小さな子供達の軍団。僕は何だか楽しくなってその剣と変身セットで戦ってあげることにした。
だけど。
いつの間にか夢中ではしゃいでいたのは僕の方で。
捨てられた、学校にも行っていなかった僕が、小さいときにしてこれなかった遊びを今していると言うことが嬉しくて。
それを見たミサりんは笑っていた。
あぁ、なんだかたまにはいいかもね。
こうして子供に戻って遊ぶって。
それを教えてくれたミサりんはきっと子供にとって素晴らしい母親なんだと思う。
いつもありがとう、ミサりん。
【おわり】
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