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天井から、姿なき声が響いた。
「どこまでも醜き種族よ、人間は」
青き炎がぽつり──空中に浮かんだ。
一同は、声を上げた。
「かくも、欲のままに」
もうひとつ炎が増える。顔をゆがめる人間たち。
「恩義も信心も忘れた生き腐りし“苧”」
その皮──いまにも剥いでやりたい気分だ。
炎のなかからあらわれたのは、立派な武装束をまとった男。
ただひとつ特異なのは、あたまから、ケモミミを生やしているというところ。
「な──何者ですか、あなたは」
東峰に目を細めるケモミミ男。
「そなた、この眼を見てなんとも思わんのか」
それはついさきほど思い出した──キツネの眼光。
「ではあなたは──キツネ?」
「我、誇り高き崇高なる【天狐族】の家臣───」
『空狐』
「空狐さま──ですね。お話をお伺いいたします。どこか二人きりになれる場所は」
「と、東峰くんッ、あああれは、バケモノだぞ?!」
「こうなってしまったのもわたしが原因でしょう。みなさまにご迷惑をかけるわけにはまいりません。わたしが話をしてなんとか治めます」
空狐は鼻で笑い、緑色の結界を空中に作った。
「入れ」
東峰は、すこし躊躇したが、ゆるりと中へ入っていった。
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