第70話 【想《おも》い出《で》水牡丹《みずぼたん》】

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    「消えた!?」 「貴様等(きさまら)は、こいつがどうやって戻ってくるか(たの)しみに待っているといい」 「い、い、いいかバケモノ!もし東峰くんにもしものことがあれば、このわたしが許さんぞ」 威勢(いせい)よく名乗り出たのは、無辛根議員である。 空狐は鼻であしらい、球体状(きゅうたいじょう)のその中へ消えていった。 なにがあったのです!──浅野があらわれた。 「バケモノが、このホテルの支配人を拉致(らち)して、あの球体のなかへ」 それは──キツネか?月弥が無辛根に問うた。 「そうだが、キミたちは?」 「退治屋(たいじや)です」 「浅野、オメェ関係ねぇだろ」 月弥が横やりを入れたが周囲の安堵(あんど)が広がり、引っ込みつかなくなる。 「まいいや。報酬(ほうしゅう)は800万でどうだ」 「カネをとるのか?!」 「このまま閉じ込められたままでもいいんなら話は別だが」 「背に腹は代えられン。東峰くんの命がまず先決(せんけつ)だ」 月弥はにたりと笑った。 月弥さん!と遠くから貞吉の声がした。 「お鈴ちゃんも、あの(かた)も、どこにもいません」 「なにッ!!?」 「まずいぞ、鈴にもしものことがあったら。・・・ここは、おれが鈴を探しに行こう。おまえはこっちを」 「頼んだぞ、浅野」 浅野は去っていった。  
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