第86話 【宴《うたげ》とくしゃみ】

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    ◆   ◆   ◆ どうにかくしゃみも収まり、寝床(ねどこ)確保(かくほ)できたのでみな、寝静まった。 闇の中に、灰色のナイフが光る。 そっと戸に手をかける。 「動くな」 背中に(こぶし)がひたと触れた。 「以前より気になっていた。おまえ、なぜ、“気配(けはい)”を消せる」 ───源九郎(げんくろう)。 「…さあ」 蘭は、目を細める。 「きさま、総帥の命を狙っているのだろう」 「───」 「しばらく身を潜ませていたのは、だれからの指示(しじ)だ?」 「へー、もうそこまで()ぎつけちゃったんだぁ」 源九郎の眼の光が白く──一閃(いっせん)する。 “殺気(さっき)”!! *   *   * 「あーもしもし、“姉ちゃん”?……ごめん、なんかバレちゃったっぽい。…うん、いや一応、口封(くちふう)じといたよ。……大丈夫。ちゃんと仕留めたから。うん。うん。じゃあさ、もうここにはいられないから、(かえ)ってもいいよね」 あァ──お姉ちゃんのお(かゆ)食べたい。 月明りに照らされた源九郎。 (ほほ)には、(あか)(まだら)(いろど)り、 蝋燭(ろうそく)(ともしび)のように、そのすがたを森へ(ゆだ)ね、 ()けていった。    
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