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◆ ◆ ◆
どうにかくしゃみも収まり、寝床も確保できたのでみな、寝静まった。
闇の中に、灰色のナイフが光る。
そっと戸に手をかける。
「動くな」
背中に拳がひたと触れた。
「以前より気になっていた。おまえ、なぜ、“気配”を消せる」
───源九郎。
「…さあ」
蘭は、目を細める。
「きさま、総帥の命を狙っているのだろう」
「───」
「しばらく身を潜ませていたのは、だれからの指示だ?」
「へー、もうそこまで嗅ぎつけちゃったんだぁ」
源九郎の眼の光が白く──一閃する。
“殺気”!!
* * *
「あーもしもし、“姉ちゃん”?……ごめん、なんかバレちゃったっぽい。…うん、いや一応、口封じといたよ。……大丈夫。ちゃんと仕留めたから。うん。うん。じゃあさ、もうここにはいられないから、帰ってもいいよね」
あァ──お姉ちゃんのお粥食べたい。
月明りに照らされた源九郎。
頬には、赤い斑が彩り、
蝋燭の灯のように、そのすがたを森へ委ね、
溶けていった。
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