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浅野はたびたび、月弥の秘めたる“チカラ”に心の均衡を揺さぶられる。
ついさきほどまで、満身創痍で息つくのもやっとのからだであったのに、なぞの少女に助けられ、しばらく休んでいたらもはやいつもの荒々しき言動の数々。
やはり──人ではないのだろう。
「月弥さん、あの少女、いったい何者なのでしょう?」
「さァな。なんの因果で救われたんだか」
「妙なことも言っておったな」
「あなたが、必要なのでアリマス、だのなんだの」
「必要?」
「もしや、鈴ちゃんの」
「供の者か?」
「だって、あの少女、獣の耳を生やしていたでしょう?あれ」
キツネ───ですよね?
「慈空に脅されて、たまらずタスケが召喚でもしたのか?」
そもそもの発端は、慈空が、鈴なる素性も知らぬ子を、京橋の村まで連れていけというものだった。
それを引き受けたのは、タスケ──。
慈空にただならぬ恐怖を抱くタスケには、鈴を無事に届けるというのは地軸が腐って引力がなくなってでも、京橋へ連れてゆかねばならぬはず。
それで──あの得体の知れぬ少女を差向けた?
「だとしたら、おれが、必要っていうのには矛盾がある」
「さよう。守るべきは、鈴のほう」
「鈴ちゃんを差し置いて、月弥さんが必要──というのはおかしいですね」
いずれにしても、早いとこ鈴をその村まで連れてゆかねば──。
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