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女湯には、鈴と、例のケモミミの少女がいた。
少女は、巻いたタオルを翻し、傍若無人に大股を開き、湯を占領していた。
「ひにゃああ~、なぁンとコリァあ、キモチイのでありましぃぃ」
鈴は、控えめにちいさくなって、彼女をじっとみていた。
ぴくぴくと、ケモミミが動いた。
キツネ、さん?──鈴がつぶやくように聞いた。
「ん?そうでありますよ。わたしは、コンコーンのキツネさんなのであります」
ぐーっと腕を伸ばすと、湯船からぷっくりと豊満でやわらかな風船が浮かび、鈴はじーっとそれを見た。
「ところで、キミは、どうして、あの人たちといるのであります?」
鈴は、頭を垂れた。
「お父さんとお母さんは?」
鈴は、首を横に振った。
「いないのでありますね。みなしご・・・では、わたしとおなじなのであります」
「え?」
「生まれたときから、親はいないのであります。でも、みんなが、わたしを一人前に育ててくれた。だから、ひとりでも平気なのであります!」
諦めなければ──夢は、夢じゃなくなるのであります♪
鈴は、頭を横へ傾けた。
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