第70話 【想《おも》い出《で》水牡丹《みずぼたん》】

1/23
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ

第70話 【想《おも》い出《で》水牡丹《みずぼたん》】

    むかし、むかし──。 あるところに、いちわの白うさぎがおりました。 白うさぎは(たび)がしたくて、 ある(くに)をめざしたいとおもいました。 白うさぎは、(うみ)をおよいでいた”わにざめ”さんたちにこういいました。 「ぼくの仲間(なかま)と、きみたちの仲間(なかま)、 どちらが数が多いのかくらべっこしよう」 わにざめさんは、せなかをならべはじめます。 白うさぎは、数をかぞえるふりをして、わにざめさんのつくったせなかの橋をわたっていったのです。 あと一歩(いっぽ)てまえで、”きし”にたどりつくことがうれしくなり、 「へへん、おばかなわにざめさんたち!ほんとうはこの”きし”にわたりたかったんだよ」 ”きし”てまえのわにざめさんは、それをきき怒りました。 「よくもだましたな!おまえの”かわ”をひきはがしてやる」 「きゃー!たすけてー」 白うさぎさんは、とうとう、そのふわふわできれい白い()がわを、 すべて、はがされてしまったのです───。  
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!