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俺はこたつが怖い。
その原因となったエピソードを、これからお話ししようと思う。
ある日、会社から帰ってくると、同棲している彼女がこたつになっていた。
「しゅうちゃん、しゅうちゃん」
「うんー?」
玄関先で靴を脱いでいると、奥の居間から彼女の声がした。
「ちょっと来て、早く!」
「なんだよ、どした?」
鞄を靴箱の上に置いて、居間に向かう。今にして思えば、なんと緊張感のないことだろうと思うが、まさか彼女がこたつになっているなんて思いもしなかったのだから、仕方ないだろう。
居間の扉を開けると、誰もいなかった。部屋の隅にある40インチの薄型テレビがつけっぱなしになっている。部屋の中央には一昨日に出したばかりのこたつが鎮座していた。
「どこにいるんだ?」
「ここよ、ここ!」
声はすれども姿は見えず。
俺がきょろきょろしていると、再び彼女の声がした。
「ここだってば、こたつ!」
「こたつの中に隠れてんのか?」
「違うの!」
彼女の切羽つまった声。
「こたつになっちゃったのよ、わたし!」
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