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「なにを馬鹿な」
思わず鼻を鳴らしてしまう。
「ほんとなんだってば!」
たしかに、声はこたつから聞こえる。だからと言って、そんな……。
そんな馬鹿なと思って、他の部屋も見て回る。と言っても、居間以外には寝室と台所ぐらいしかない。彼女がどこにもいないことは、すぐに判明した。
「どうしよう、しゅうちゃん」
泣きそうな声音で、彼女が言う。
「どうしようったって、お前……」
俺は言葉に詰まった。まだ彼女がこたつになったとは信じきれなかったが、それでもどこにも彼女の姿がなく、こたつから声がするという事実は厳然として存在している。
「わたし、一生、このままなのかなぁ?」
「そんなことはないと思う、けど」
考えがまとまらない。世界がぐるぐる回っているような感覚。いわゆる混乱というやつだ。
え、うそ、まじで?
「ほんとに、お前、こたつになっちゃったのか?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃない!」
しばしの静寂。
ともあれ、だ。
俺はなんとか気を持ち直した。
ともあれ、彼女がこたつになったことを認めるしかない。でないと、話が先に進まない。
「自分じゃ戻れないのか?」
「無理よ、どうやってこたつになったのか、分からないんだもの」
「うーん」
俺は腕を組んで、考え込む。
こたつになったという結果がある以上、こたつになる原因があるはずだ。まずは、その原因を調べないと。
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