0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
[よし、対岸にこのまま橋頭保を築く! 敵部隊を排除しつつ、前線拠点の構築を急ぐぞ!]
[リトルボーイ、よくやった! だが作戦の本番はこれからだ。気を抜くなよ!]
「はい!」
戦闘は、まだ続いている。
画面の中で、インディア中隊の歩兵たちが──そして二機のシ式改が、敵に応戦しつつ前に進む。
その様子を──
「俺の挑発で気を乱すかと思ったが──思ったより落ち着いとるな」
中世鎧のような模様が施されたジャグリオンの中、多目的モニターを通じて御蔵が見守っていた。
「良くも悪くも、ゲームで戦い方を培っとるようじゃのぉ。作戦目的がハッキリしとれば迷わんタイプか……」
御蔵の考えでは、先の自分の挑発で、隆義が戦果を上げる為に無茶をするかと思ったのだが──
現在の所、彼が義辰の出す指示に忠実に従っている様を見て、こいつは "思ったより慎重" と分析したようであった。
「ま、ストレスが溜まると物に当たるクセがあるようじゃが」
そう、見ていたのだ。
隆義のシ式が、御蔵の挑発の後、地面を殴っている様子を。
[御蔵くん! どうだい新入り君の様子は]
「松、ちっと待ったぞ。──あいつ、お前と比べたら格段に慎重なタイプじゃ」
唐突に響いたあどけない──そして生意気そうな少年の声に、御蔵は驚くでもなく自然に受け答えする。
[突っ込んでドッカーンとは行かんかった?]
「来たばかりの時のお前じゃないんじゃけぇ。──あいつ、ジジイの指示に従っとるぞ。それに、歩兵と連携も取りよる」
[ほほぅ、周りに合わせるタイプってやつ?]
「そのようじゃ」
受け答えで一息をついた御蔵。
彼はその直後、シミュレーターの起動に入った。
「松、シミュレーターは起動しとるか?」
[とっくに。サウザンドと──俺の名を言ってみな! も、今ログインした]
「アルファチームは、あと俺だけか。」
シミュレーターで様子を見ていた事で、彼がログインするのは早かった。
御蔵が眺めている多目的モニターの画面は、すぐに広島市を再現した電子の戦場へ切り変わる。
そして、場所は──隆義がシ式に乗って逃れて来た、あの呉へと続く爆破された橋の目の前だ。
「待たせたのぅ」
[おぅ。待っとったぞ、メル]
「サウザー、ジャギ、エニアック……」
[サウザンド、今のピー音鳴らんかな?]
[大丈夫じゃろ]
最初のコメントを投稿しよう!