12.盤の外

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[よし、対岸にこのまま橋頭保を築く! 敵部隊を排除しつつ、前線拠点の構築を急ぐぞ!] [リトルボーイ、よくやった! だが作戦の本番はこれからだ。気を抜くなよ!] 「はい!」  戦闘は、まだ続いている。  画面の中で、インディア中隊の歩兵たちが──そして二機のシ式改が、敵に応戦しつつ前に進む。  その様子を── 「俺の挑発で気を乱すかと思ったが──思ったより落ち着いとるな」  中世鎧のような模様が施されたジャグリオンの中、多目的モニターを通じて御蔵が見守っていた。 「良くも悪くも、ゲームで戦い方を培っとるようじゃのぉ。作戦目的がハッキリしとれば迷わんタイプか……」  御蔵の考えでは、先の自分の挑発で、隆義が戦果を上げる為に無茶をするかと思ったのだが──  現在の所、彼が義辰の出す指示に忠実に従っている様を見て、こいつは "思ったより慎重" と分析したようであった。 「ま、ストレスが溜まると物に当たるクセがあるようじゃが」  そう、見ていたのだ。  隆義のシ式が、御蔵の挑発の後、地面を殴っている様子を。 [御蔵くん! どうだい新入り君の様子は] 「松、ちっと待ったぞ。──あいつ、お前と比べたら格段に慎重なタイプじゃ」  唐突に響いたあどけない──そして生意気そうな少年の声に、御蔵は驚くでもなく自然に受け答えする。 [突っ込んでドッカーンとは行かんかった?] 「来たばかりの時のお前じゃないんじゃけぇ。──あいつ、ジジイの指示に従っとるぞ。それに、歩兵と連携も取りよる」 [ほほぅ、周りに合わせるタイプってやつ?] 「そのようじゃ」  受け答えで一息をついた御蔵。  彼はその直後、シミュレーターの起動に入った。 「松、シミュレーターは起動しとるか?」 [とっくに。サウザンドと──俺の名を言ってみな! も、今ログインした] 「アルファチームは、あと俺だけか。」  シミュレーターで様子を見ていた事で、彼がログインするのは早かった。  御蔵が眺めている多目的モニターの画面は、すぐに広島市を再現した電子の戦場へ切り変わる。  そして、場所は──隆義がシ式に乗って逃れて来た、あの呉へと続く爆破された橋の目の前だ。 「待たせたのぅ」 [おぅ。待っとったぞ、メル] 「サウザー、ジャギ、エニアック……」 [サウザンド、今のピー音鳴らんかな?] [大丈夫じゃろ]
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