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12.盤の外
学校から退学させられたという菊花と、委員長こと真澄。
心の伝手により、二人は轟震を訪れたのだが……。
隆義はシ式の操縦席の中、心と共にそこに居た。
もちろん、きゅーちゃんも一緒にいるのだが、相変わらず隆義以外に姿は見えない様子で──
「ところで、どんな装備を使いたいの?」
「……敵が踏んでなくても自分で起爆できる対戦車地雷」
「ん、わかったよー」
端末を操作する心に、操縦席に座ったままの隆義、その様子を上から、菊花と真澄、そしてきゅーちゃんが覗きこんでいる。
「リモート爆弾と、地雷を組み合わせて……っと」
「大変そうね……」
菊花が口を開く。
それを皮切りに、隆義が上の二人(きゅーちゃんがいるので実質は三人だが)を見上げた。
「自分の学校を守ろうとしただけだってのに、姉ちゃんの学校の校長先生ひでぇな……」
ぼやく隆義に、菊花がさらに応える。
「隆義も見たじゃろ。昨日あんたにも凄い剣幕で怒った、尖がった眼鏡の先生よ」
言われてみれば。と、隆義は昨晩の事を思い出した。
特徴が一致する、冗談がききそうにないヒステリックな女性教諭の事だ。
「あの人が校長だったのか……」
「騒ぎが大きくなったんは勝手にロボットに乗った私のせいよ。委員長のせいじゃないのに……」
「姉ちゃん……」
菊花の視線はため息と共に、格納庫の片隅で調査中の豪攻車に対して恨めしそうに向けられる。
タイヤが片方吹き飛んだそれは、紛れもなく菊花が乗った機体だったからだ。
「とにかく……夕凪さんと木戸さんの伝手で、私もここに来る決心を固めたんです」
「戦うの?」
「退学させられたとは言え、仲の良い友達が沢山いる学校を守りたいですから。……もし戦えなくとも、皆さんを支えたりお手伝いできる事はあると思うんです」
真澄の真剣な面持ちと、何よりも今発せられた言動で、隆義は「この人は強い」と感じた。
それが、きゅーちゃんにも伝わったのか──
「ますみさん、まるでうちのおかあちゃんみたい……」
真澄の耳には届かないが、きゅーちゃんは自身の母を思い出しながら呟く。
見上げる隆義の視線の先、シ式の乗降ハッチの縁で猫のように頬杖をつきながら、きゅーちゃんは「えへへ」と笑った。
「はい、設定できたよっ!」
ここで心に声をかけられ、隆義は目の前に向き直る。
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