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自分を好きになろう。 他者に自分の価値を求めるのではなく、自分で自分の価値を認める。 そうすればこんな誰にでも振りまかれる優しさに心乱されることもなくなるはず。 優しく包まれた大きな胸やそっと添えられた手の温もりに永遠を求めて泣けてきたりしないはず。 あんな愚行も繰り返さなかったはず… 余計なことは考えず素直に感謝の意を伝えれば今日の出来事は終わりになるのだ。 そしてまた強くなろう。 今はまずこの手を離して元気に振舞う。 それが自分を好きになる第一歩だ。 拓は意を決して孝行の手を避けた。 孝行は拓の顔を見る。 拓は一瞬しか目を合わせられなかった。 「助けてくれて、ありがとう」 涙が零れないように必死で伝える。 「藤崎先輩がしばらく用心した方がええって言うてた」 孝行の口調は普段より一層優しい。 きっと拓が落ち着くまで喋るのを待っていてくれた。 「なるべく一人で出歩かんほうがええな」 そうしたいのは山々だが…誰がついて来てくれるというのだろう。 拓はまた自分の孤独を噛み締める。 「どっか行く時は必ず俺に言うんやで」 孝行は自分が守ると当たり前のように言う。 ほら優しい。 拓は零れる涙を止められず震える声で精一杯応えた。 「ありがと…」
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