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孝行は思った。 聞かなくても良いことを聞いたかもしれない。 インターハイの予選会場。 孝行はまさか自分がこんな高校生らしいイベントに参加できると思っていなかった。 また一つ夢が叶った気分だった。 藤崎は念願の一回戦突破に意気込んでいた。 それなら拓も強引に入部させれば良かったのにと孝行は思う。 今日の応援だって拓本人が行くと言っているのに藤崎は無理しなくて良いと断った。 何なんだろう? そんなことを思いながらも楽しくて嬉しくて会場を見回していると、上の観覧席に拓を見つけた。 初めての場所で良く分からないが、とりあえず拓がいる場所に向かってみる。 途中拓が階段を下りて行くのが見えた。 せっかく上って来たが、拓を追いかけ別の階段を下りかけたところで声が聞こえ、孝行は足を止めた。 「拓、大きくなったな」 階段の手摺から下を見る。 「あの頃はあどけなくて可愛いかったけど」 いかにも柔道という体格の、学生ではない男性が拓に話しかけている。 孝行には二人で話すために人気の少ない通用口側に来たように思えた。 「今のお前も悪くないな。男になりきってない微妙さがそそる」 男は何だか楽しそうな声で喋っているが拓は応えなかった。 「藤崎追いかけて行ったのか?俺らも随分可愛がってあげたのになぁ、藤崎そんなに良かったか?」 ニタニタといやらしい顔が浮かんできそうな喋り方だ。 「そんなんじゃありませんよ、藤崎だけは可愛がってくれなかったので」 拓は落ちついた声で言い返す。
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