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自分のルームメイトの名前が嫌だった。 赤井孝行 タカユキ それは拓をこんな風にした根源の名前だ。 いや、タカユキのおかげで生きて来られたのかもしれない。 でもタカユキがいなかったらこんな風にはならなかったと思う。 複雑な思いを打ち消すためにも皐月に心をかけていたのだと思う。 タカユキへの想いはまだ上手く昇華できない。 思い出したくない。 なのに同じ名前の人と一年間過ごさなきゃいけないなんて。 赤井孝行は何も悪くない。 でも分かっていても何だか会いたくなかった。 どうしてもタカユキの顔が浮かんで来る。 皐月にもすがれない。 今日来たばかりだけれど、学校にも寮にも既に居場所がない。 息苦しい。 やっぱり自分なんかいなくなってしまえばいいのだ。 せっかく皐月が救ってくれた命だけれど… あの時綺麗に死んでしまえば皐月に迷惑をかけなかった。 自分は親にも愛されず他人に迷惑だけを振りまいて生きているのだ。 自室の扉の前でどのくらい立ち尽くしたか分からない。 もう消えてしまいたくて、まとまらない思考の中で拓は溺れそうになっていた。 「いつまでそうしてんねん?」
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