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自分の生い立ちについては孝行の中で既に昇華済みだ。
多分それが原因だと思われる恐怖心こそ消えないものの捨てられたことはどうでもいい。
拾われてからの方が色々あったし。
出生が明らかになった時、周囲の大人は様々な反応を見せた。
妙に同情したふりをして可哀想にと慰める人もいた。
無駄な正論を並べて社会のあり方なんぞを説く輩もいた。
そういうのは孝行を不快にさせた。
拓は孝行を抱きしめて泣いた。
自らがその立場だったらと想像して。
同情もあったかもしれない。
なにより大丈夫だと伝えたかった。
拓はその産み落とされた瞬間の孝行を抱きしめたかった。
怖くないよ。
大丈夫だよ。
そう思いを込めて抱きしめてあげたかった。
水なんかが怖くならないように。
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