もう幾つ寝ると

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もう幾つ寝ると

「春からやっと社会人でしょ。お年玉くらいあげなさい」    母に嫌味半分に言われ、渋々姪っ子にお年玉をあげることになった。僕の知らない、間抜けな顔をしたキャラクターが大きな口を開け、貧乏学生にとっては大金の5000円を飲み込む。    毎年正月には祖母の家で帰省に合わせた親族の集まりがある。大人たちは上機嫌で酒を飲み、意味のない会話を交わしたりテレビにヤジを飛ばしている。僕は下戸なのでぼんやりとテレビを見ていた。姪っ子は子供特有のサラサラな黒髪を垂らして俺の前にいる。僕のあげたお年玉だけが何故か炬燵の上にあった。 「美空ちゃん、お年玉要らないの?」 「要らない。その代わり……」  姪っ子は不敵に笑って言った。 「デートして」 「デートって。最近の子はませてるね」 「馬鹿にしないで。私はもう1/2成人式を終えた立派な十代なのよ。お金もあるしね」  ポシェットから覗く色とりどりのポチ袋たちを合わせると、おおよそ3万円は入っているだろう。 奨学金の返済、新しいスーツ、交通費、脳内で3万円から思い浮かぶ支出は無限だ。こうして、(どうして)僕は姪っ子にお年玉で買収された。
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