もう幾つ寝ると

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 雇用主の希望で近所の神社に初詣にきた。子どもの頃と変わらない風景。心なしか小さく見えるのは体ばかりが成長してしまったせいだろう。  昼過ぎで落ちついたとはいえ、普段は閑散としている神社もこの日ばかりは大勢の参拝客で賑わっていた。境内で振る舞われている甘酒は冷えた身体に沁みる。彼女は参拝を終えると団子を所望した。甘い飲み物からの甘味は流石に胸やけする。僕はいらないと言ったけれど、結局みたらしとあんこを買って分けあった。  雇用主は満足してもらえただろうか。姪っ子の方を見ると予想外に曇った表情をしていた。何かヘマをしてしまったのかと動揺する。 「女の子って何だろうね」 「俺も知りたいよ」  唐突な質問に困惑する。事情を聞いてみると、最近、周りの子達と体の変化について話すようになったという。次は自分かもしれない、でも誰にも相談できない。姪っ子は父子家庭だった。 「保健の先生に相談してみたら?」 「そうだね、ありがとう」  すっかり馴染みとなった検索ワード欄に入力すれば、世の中の全てを知ることができる。そう思っている大人も多いはずなのに、嘘も真も自分が選んで信じるしかないのだと彼女はわかっていた。本当は仕事で来られなかった僕の姉に相談したかったのだろう。所詮異性の僕が役立てただろうか。 「そうだ、忘れないうちに今日の報酬を渡さないとね」 「要らないよ。美空ちゃんとデートできて俺も楽しかったし」 「そうなんだ。ほんとかな」 「本当だよ」 「大人って楽しい?」 「うん、超楽しいよ」  これから何にだってなれる少女に笑いかけた。  ふふふ  あはは  子供らしい笑顔を見せたかと思うと、舞台が展開するように表情がガラリと変わる。 「私が大人になったら付き合ってくれる?」 「その頃には僕はおじさんだよ」 「安心して。私はその頃とってもいい女になってる」  末恐ろしいな。上手い返事ができなくて思わず苦笑する。一歩ずつでいいから、急がずおいで。俺の階段もまだまだ先がありそうだから。
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