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「僕の勝ちだ」
「うぅ~勝ったと思ったのに~」
デュエマが終わり、僕に負けた水狐がぐでーっと机に突っ伏す。
「というわけで、約束通り僕が勝ったからアポ取って後日取材だ」
「うぅ~はーい」
そういって水狐が身体を起こし席を立った。
その表情はデュエマがはじまる前の暴走状態とは違い、かなり落ち込んでいた。
「うぅ~取材、したかったな………」
水狐はそう呟きながらがっくりと肩を下げて、とぼとぼと店の外に向けて歩き出す。
そんな水狐を見て、僕は思わずため息を吐いてとぼとぼと店から出ようとする水狐の背中に声をかけた。
「………はぁ~水狐」
「?なに?」
水狐が酷く沈んだ顔でこちらを見てくる。
僕は頭を掻きながら水狐から顔を逸らし、窓から店の外を眺めながら口を開いた。
「取材………もしアポが取れて今日取材を受けてくれそうなら、付き合ってやる」
「えっ!?」
「許可さえあるなら、後日に回す理由もないしな。僕だってこうして呼び出されたんだから、無駄足は勘弁だ」
僕がそういうと、少しの間店内が静かになったかと思うとしばらくしてまた底抜けた明るい声が聞こえてきた。
「ホント!?ホントに許可が取れたら今日あおくんが一緒に取材に行ってくれる!?」
「こんな下らないことで嘘なんかつくか。いいからさっきと許可取ってこい」
「うん!!絶対に今日取材が受けれるように許可取ってくるからね!!待っててね」
そんな声が聞こえたかと思うと次の瞬間に勢いよく店の扉が開く音が聞こえた。
恐らく水狐が許可を取りに行くために店を飛び出していったのだろう。
僕が思わずため息を吐くと周りから3人の呆れたような声が聞こえてきた。
「あれだけ言い合いになってもなんだかんだで最後には蒼衣は水狐に付き合ってあげるのよね」
「蒼衣は根っこではお人好しだからな。口では文句を言いつつも、水狐ちゃんを見捨てる選択肢は蒼衣には取れないんだろうぜ」
「………お人好し、というより、ツンデレ?」
「うるさい、特に美桜」
「………怒られた」
僕の言葉に美桜がしゅんとした声を出す。
ああ~クソ、やりにくいな、もう。
そんなやりとりをしていると店の扉が勢いよく開いた。
顔を向けるとそこにいたのは満面の笑みを浮かべた水狐だった。
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