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「今日はいつもよりお客さん来てないんだな」
「失礼な言い方ね。今はちょうどピークが過ぎた時間帯なの」
そういいながら霧華はミルでコーヒー豆を砕いていた。
自分で飲む分でも作っているのかと思っていたが、霧華は顔をこちらに向けずに口を開いた。
「蒼衣、悪いけどあの娘呼んで来てくれない?昼前から部屋にこもりっぱなしだから心配なの」
「えっ、マジで?確かに心配だけど、そういうのは兄貴分に任せない?」
「その兄貴分がいつ来るか分からないでしょ?私はあの娘の昼食を作っておくから呼んで来るのよろしく」
「………仕方ないな、分かったよ」
そういって霧華にカウンターの中に入れてもらい、カウンターの奥から霧華の家に上がった。
そのまま廊下を真っ直ぐに歩いていき、廊下のつきあたりにある部屋の前に立つ。
僕は頬を掻くと、部屋の扉をノックし、そのまま扉を開けた。
部屋の中を覗くと、その部屋には大量の猫のぬいぐるみが散乱した部屋だった。
ぬいぐるみがあること自体は可愛らしい趣味だと思うが、流石に量が多過ぎてちょっとホラーに見えるぐらいだった。
そしてそんな部屋の持ち主はぬいぐるみに埋もれながら猫耳のついたパーカーを被って部屋の隅においてあるパソコンに何かを打ち込んでいるようだった。
「………」
部屋の持ち主はこちらに気づいていないのか一心不乱にパソコンにむかい、キーボードを叩いて何かの文章を作成しているようだった。
取り敢えずこのまま黙っていても仕方がないので、僕はその人物に声をかけることにした。
「おーい、霧華が呼んでるよ」
「………っ !!」
声をかけると身体をびくっと硬直させたかと思うと、被っていたパーカーが脱げるぐらいのスピードでこちらを振り向いた。
そこにいたのは中学生と見間違う程小柄な少女だった。
パーカーが脱げて覗くのは綺麗な黒髪のショートヘアーと頭についている桜をモチーフにした髪留めだ。
その少女はこちらを見ると反射的にか近くにあったぬいぐるみを手にとって………
「………勝手に、入って、こないで!!」
「げふっ!!」
そのぬいぐるみをおもいっきり顔面に投げつけてくるのだった。
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