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「………」
「ごめん、悪かったって美桜」
そういって僕は霧華が用意した昼食を食べながらコーヒーを飲んでいる少女ーーー神無美桜(かんな みお)に謝る。
美桜はこの喫茶店の居候となっている少女だ。
実際はこの喫茶店の元の持ち主が美桜の両親の知り合いらしく、それを何らかの事情で霧華に貸し出しているらしいので、ある意味では美桜が店長なのかも知れないが。
しかし、美桜は明らかに中学生ぐらいにしか見えない外見をしているが、これでも大学教授をしている社会人だ。
学生時代も病弱な部分はあるが、文武両道のしっかりもので常に学年トップの成績を修めていたとか。
実際、美桜が作る授業のレジュメ分かりやすく、生徒達のお悩み相談のようなものもしているので生徒達には評判らしい。
だが、そんな美桜にも大学教授の話している上での欠点がある。
それは………
「………別に、怒って、ないよ」
美桜はコーヒーを飲みながらいつも通りの無表情でたどたどしく話す。
大学教授をしている美桜の欠点。
それは表情が乏しく無表情なのがいつも怒っているように見え、口下手なので発言が途切れ途切れになってしまうところだ。
美桜自身の性格は温厚で素直なので、自身の無表情を気にして気をつけようとはしているみたいなのだが、その結果より無表情になり口数も減ってしまうらしい。
実際、付き合いが、まだ浅い僕には美桜の無表情から本当に怒っていないのか判断がつかなかった。
思わず僕はカウンターに頬杖をついてこちらを見ていた霧華に囁いた。
「なぁ、霧華。美桜は本当に怒ってないの?」
「私もまだ美桜の感情を読めるレベルには達してないわ。そこまで判断できるのは美桜の両親とその知り合い、後はアイツぐらいよ」
「………」
無表情のままコーヒーを眺めている美桜により、なんとも言えない空気が流れる中、喫茶店の入り口の扉が開かれた。
「うぃーっす。あれ、どしたのこの空気?また蒼衣がやらかした?」
「お前は僕のことをどう見てるんだよ霧黒」
入ってきたのはどう見ても軽そうな金髪の青年で、僕の友人でもあり、この中で唯一美桜の感情を読み取れる美桜の兄貴分、七楽霧黒(ならく むくろ)だった。
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