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「霧華ちゃん、これどういう状況?」
「蒼衣に美桜を呼びにいかせたらこんな状況よ」
「うわっ、びっくりするほど雑な情報。蒼衣がやらかしたっぽいことはわかるけどさ」
「ぐっ、否定できない………」
霧黒は高校時代からの僕の友人だ。
女性に対して基本的に『ちゃん』付けで呼ぶことや外見から軽い性格に見えるが、これで周囲に合わせて気配りができ、面倒見がいいムードメーカー的な存在だ。
高校に入学した時にたまたま一緒のクラスで席が近く、話してみると趣味もあい、そこからこうして卒業した後もなんだかんだでつるんでいる。
霧黒との付き合いから、この喫茶店『ジョーカー』と霧華、美桜とも出会うことになった。
困ったように頭を掻きながら、霧黒は美桜の方に近づいた。
「よっ、お嬢。どうしてそんなに悲しそうにしてるわけ?」
「………これ」
そういって美桜が差し出したのは喫茶店にまで持ってきていた僕に投げつけた猫のぬいぐるみだった。
霧黒は差し出された猫のぬいぐるみを見て描いてを浮かべた。
「ははーん、成る程ね。ぬいぐるみが解れたから悲しんでたのか」
「………うん。さっき、びっくりして、反射的に、投げちゃった、から」
「成る程ね。大丈夫だって、お嬢。このくらいの解れならお兄さんが直してやるからさ。機嫌直せって、な?」
「………」
「蒼衣だってわざとじゃなかったんだと思うし、なんならお兄さんが追加でぬいぐるみ1個作ってやるから、な?」
「………ホント?」
「勿論」
「………ん、わかった」
そういって美桜は顔を上げるとこちらを見た。
「………今度からは、ちゃんと、声をかけてから、入って、きて」
「あ、ああ。悪かった」
「ううん………私も、ぬいぐるみ、ぶつけちゃって、ごめん」
「いや、いいって。元々僕が悪かったんだし」
ぺこりと頭を下げる美桜に慌てて手を振る。
それで納得したのか美桜は顔を上げて昼食を再開した。
それを見て、霧黒は一息つきながら霧華の方を向いた。
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