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「下っ端に頭を下げさせて済ませるのもどうかと思うが。その、何でも屋というのはどういうことだ?君たちの部署はいったいどういう仕事をしているのだ。」
「あはは、あちらさんとは庁ぐるみで仲が悪いので、謝罪すらも嫌がらせに早変わりというか。・・・胃が痛いです。って、あの、室長から説明ありませんでしたか。」
「神谷室長とは先ほどが初対面だ。そして対面の五分後には君に引き会わされた。」
あのチビ親父・・・!
部下どころか客人にも説明なしか!そりゃ機会があれば説明するって言うわ、向こうは機会を与えられなかったのだから・・・!
「上司がほんとすみません・・・。自分の力が及ぶ限り物申しておきますので。うちの部署の名前はご存知ですか?」
「聞いてはいる。だが、そもそも名前からして意味が分からなかった。」
そう、うちの部署は名前の意味がかなり分かりにくい。
その名も、『警察庁警備局 警備企画対策情報室』
普通に考えると、警備の企画をしてその対策を立てて、えっと、情報はどうするの・・・?となる。が、これは読み方が違うのだ。
警備の企画をし、対策も立て、情報も集める、直列ではなく並列で読むのだ。
「縦割りを批判され続けた日本警察は、横をつなげるのを諦めて、縦と縦の間を別の縦で埋めることにしたんです。妥協案ですね。日本人は多方面とつながるにはあまり向かない民族ですから。悪くない考えだとは思いますよ、自分が配属されるのでなければね。」
警備企画対策情報室は当時、警備局内の縄張りでグレーゾーンである案件をカバーする部署、すなわち、実質すべての部署の案件に関わり得る部署として設立された。
室長が持つ権限の大きさと警備局長直属とされ、掛けられる期待、責任、そして妬み嫉みの大きさたるや凄まじいものだったと聞く。
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