1.魔法使い

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「初代室長に就任したのは真面目・有能・安心・安全と評判の若手だったんですけど、プレッシャーはすごいし仕事は多いし、なのに足を引っ張るやつ嫌味を言うやつ諸々多いし、挙句命名も押し付けられて出すもの出すものなんくせ付けられて、いかな安心・安全と言えどもキレてしまったらしくて。当時警備局にあった部署の名前を適当に並べて、文句あるかって上に叩き付けたのが今の名前だそうです。」 「・・・まあ、相当な苦労があったのだろうな。」 なんとも言えない顔で犬神氏が言った。 ちなみに、彼が叩き付けた部署名は本当はもっと細かく、実に十二センテンス、現在の三倍の長さだったの、初めてキレた彼に唖然とした周囲が慌ててなだめて今の形に収まったらしく、数年有名な笑い話として庁内をにぎわせたと言う。 一方、当時若手だったキレた初代室長は、何かのタガが外れたのかその後安心・安全の看板を下ろし、代わりに真面目・有能・取り扱い注意の看板を引っ提げて出世街道を爆走し始める。 最初は件の命名事件をネタにニヤニヤと眺めていた先輩諸氏は、彼の階級が上がるにつれてだんだんその顔をこわばらせ、ついに長官にまで登りつめるに至り、そのネタは厳重に封印された。 数年前に初代室長、前の長官が退官したため、再びこの逸話が出回るようになり、清水のような新人も聞かされている。 また、初代室長の代名詞、 真面目・有能・取り扱い注意だが、真面目を除いた有能・取り扱い注意だけが、現在まで続く当部署の伝統となっている。 年々取り扱い注意の度合いが増しているらしく、・・・誠に残念なお話である。 「あ、着きますね。」 遺憾ながら見慣れつつある建物に呟いてから、思い出した。 魔法使いの話、何も聞いてない。
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