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小金井学園・裏門前
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~放課後~
「──なァ、あの香田ってヤツ…。もしかして留年してるとかじゃね?」
「見た目が大人っぽいからって見かけで判断するな」
「でもあんなハッキリ物言う女は久しぶりに見たぞ?オレの人生で3人目。…ヒカルとミ──」
「──その名前を出すな」
なんだかんだ怒りが収まりきらない担任の小言のような文句を再三聞かされたオレ達のクラスが帰りの挨拶を済ませたのは、他のクラスの生徒がガヤガヤと通り過ぎてから暫く経った後だった。
「なぁ…アイツらとまだ連絡取ってたりすんの?」
「んな訳ねーだろ。2人共他に男作って居なくなったんだぞ。関わるかよ」
「うわー根に持ってる感じ?」
「いや、お前の喜ぶような未練なんて微塵も残ってない」
「でも…ヤる事はヤッたんだろ」
「そりゃ付き合ってたからな」
「なんかそれが不思議だよなァ…お前なんかどっからどう見ても女みたいな顔してんのに年中無休でモテまくってるしさ…。オレより先に童貞卒業したとか未だに信じらんねーんだけど」
「うるせーよ。お前だって中学卒業ついでにそこらの女捕まえて童貞も卒業しただろうが」
「だぁから!お前より後ってのが──」
「──待て…ッ…」
まただ、…この匂い…。
「おやおや、随分楽しそうな声が聞こえると思えば…一体なんのお話ですか?」
いつもどこからか現れる影の薄いイケメン。
「ッ、釜伸くん…」
「“先生”です。これから3年間ここに通うんですからクセをつけなきゃダメですよ?ほうじくん」
「釜伸くんは釜伸くんだから先生って呼びたくねーよ!」
「せめて学園に居る間は先生と呼んでください」
「…ッ、」
呼び止められたオレ達の視線の先には入学式の時のセット。クキの習い事の先生でもある釜伸先生…と、キモいメガネだ。
ていうかさっきもだけどコイツ日本語わかんねーのかよ。また、オレの顔を見て固まってるし。
確か…コイツ…釜伸先生とオレのクラスの担任と一緒に新任の教師として紹介されてたな。入学式だというのに堂々と白衣を着て一人で浮いてたような。
…根暗キモ。
「…キミの名前をまだ聞いてなかったですね。お名前は?」
「…深谷。」
「フフ、…下のお名前は?」
「…なんでオレから名乗りを強制されなきゃなんねーんだよ。聞きてーなら自分から名乗れ。」
因みに、それを理由に馬鹿にするつもりはないが、オレはこういう透かした態度をガキ相手にとるような大人が苦手だ。
クキが懐くくらいだから悪い奴じゃないってのはわかるが、本来の自分を隠して大人振るヤツが好きじゃない。
「フフ、これはこれは失礼しました。確かにそうですね。僕の名前は御手洗釜伸──」
「──深谷煎だ。」
「あ、…深谷くん、これから3年間宜しくお願いしま──」
「──もう用はねーよな?帰る。」
「ッ、」
まあ、この居るのか居ないのかわからないくらい存在を消してるこの教師(瓶底メガネ)よりマシなんだろうけど。
…オレの記憶から一瞬で消えそうだコイツ。
覚える気にもならねーよ。
「──おいクキ。オレはもう帰るけどお前は残るか?」
「あ、待てよ!オレがお前をほっとく訳ねーだろ!」
「早くしろ、置いてくぞ」
「あーあー、お前は本当にいい男だなクソッタレ!」
オレ達の入学式は2人揃って誰も見に来る事なく、もう何年もこの学園に通ってるような普通の日のように過ぎ去って行った。
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