【side:玄】

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──────────────── 香田家・玄の部屋 ──────────────── 5a6bb4c5-3fa3-487a-b07b-ecdd9a26ecae ※画像イメージ ──プルルルル…プルルルル… ──ガチャッ “只今、電話に出る事が出来ません。ピーと言う発信音の後に20秒以内でメッセージをどうぞ” ──ピー 「…って20秒以内で俺の半年が語れるか!」 くそう…また騙したな釜伸のヤロー。 今日こそは電話してくれると思ったのに、俺が一旦家に入ったら外に出たくないヤツだと知っててその行動か。 よぅしわかった、月曜日体育館裏に呼び出してやる。職場が学校なら学校らしく怒ってやろうじゃねぇか。 俺だってプンプン丸になったらフォイフォイしちゃう事くらい朝飯前なんだぞ!! 「せっかく急いで全身洗って出てきたってのに…」 お陰様でちょっと息切れしてポカポカしてるっつーの。 「…裏切り者め。いいよもう、キンタに電話してやるから。…してやるんだからなッ!」 短縮に掛けられるようホーム画面に置かれた釜伸と玉露の番号。 素晴らしい勢いで俺のスマホがお仕事してくれるからストレスフリーでアイツらに掛けれる。 「ホントに電話しちゃうんだから!」 マンションの最上階とその下の全フロアを占めている俺が妹と住む家。 その全体に響き渡る大声を張り上げて風呂上りの濡れた髪もソコソコにベッドにドカッと横たわった俺は、天井とにらめっこしながら次なる獲物へと念ごと電話を繋げた。 ────プ、プ、プ、プ、プ… プルルルル…プルルルル… 「あれ…そーいや…俺、なんでキンタに電話したいんだっけ?」 プルルルル…プルルルル… 「ま、いっか暇だし。まだ23:30だし」 プルルルル…プルルルル… 「つーか遅くね?出なくね?」 諦めて切ろうと耳につけたスマホを顔の前に持ってきた瞬間、 プルルルル…プルル、──ガチャ… 『ハァ…──なに?』 ──わぁ!出てくれたぁあぁあッ! 「ちょっとー。出るの遅いけど何シてる訳?普通に諦めようかと思ったんですケド」 『チッ…もう少し我慢すればよかったわ』 ため息混じりで電話に出た玉露。 “なに…?”って言ったトーンからして物凄く眠いタイミングで俺が電話を掛けた事を悟った。 …けど、 「そー言わずにさ。…で?ナニしてたの?」 切るつもりはないから! 『ハァ…お前聞き方がうぜぇんだよ。今から寝る所をお前に邪魔されたんだ。諦められる程度の用なら話す事もねぇな。…切るぞ──』 「──あああゴメン!ごめんなさい!ちょ、ちょっと待って!切らないで!」 させるかよ!俺寂しいって釜伸に遠回しで言ったのに聞いてくれなかったんだぞ! 可哀想じゃねーか俺! 『…お前…確信犯だろ』 「へ?なにが」 『チッ…あーいいや。…で、なんだよ。…言っとくけどお前のクソつまんねぇ恋バナは聞かねぇからな』 「あーいや…明日一緒に行くんでしょ?待ち合わせどこなのか聞いてないしそもそも撮影場所どこなのか知らないんだけど」 ただでさえ機嫌がナナメってるお眠の玉露を怒らせたら確実に切られるしキレられるからとりあえず必要な事から話してそれから得意の“なんとなく”を出せばいい。 『てか…なんでお前知らねぇの?バーターの連絡来た時に詳細聞いたんじゃねぇのかよ』 「あー…うん、なんかキンタのマネージャーに“詳しい事カネツユに聞いて”って言われたから…」 『…はぁ俺?なんで俺なんだよ。アイツの仕事だろうが。しかもお前…あんなくだらない話する前に聞く事だったろ。忘れてんじゃねぇよ』 「そんな怒んないでよぉツユ様~」 早々お説教モード全開で寝れなかった腹いせを本気でぶつけてくる玉露。 テメー何ちゃっかり八つ当たりしてくれてんだボケこら。すっ転ばしますよコイツコノヤロウ。
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