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なんだなんだとざわつくのは、人を散々待たせた挙句に悪びれる様子もなく教師泣かせな態度を取るあの女が居るからで…幼少期、まるで綿あめを愛でるかのように甘やかされて育ったのだろうと想像に容易い。
ハッキリ言って初日の印象は最悪だ。
一見ヤンキーって見かけでもギャルって見かけでもないから只の気が強そうな女だと思ってただけだが、ある意味裏切られたな。
久しぶりにここまでずば抜けているヤツを見た。
それに加えて、コイツは恐らくオレと同じようなタイプで大人泣かせの饒舌。
…もれなく苦手だ。
「──なあニィ。なんで遅れたんだ?」
「え…あーうん…ちょっと上級生に呼び出されてね…」
「は?…もう?」
「うん、多分マッちゃんと仲良くなりたくて呼んだんだと思うんだけど、マッちゃん話も聞かずにぶっ飛ばしちゃったんだよね…」
「ブハッ!マジかよ!」
目の前に座るクキと“ニィ”って女が今までの経緯を話してるのが聞こえる。
…つーかマジかよ。
入学初日で暴力沙汰とか笑えねーだろ。
ヤンキーより気合い入ってんじゃねーかあの女。
ガキ大将半ベソ級のお転婆だぞ。
「…これ以上マッちゃんを刺激して欲しくないんだけどな…」
「なんでだよ、もう怒られてきたとか?」
「うん、殴られた男の先輩もマッちゃんも…その場に居た私もみっちりね」
「ブハハッ!!アレか?お前の言ってた昔からの親友って」
「うん。可愛いでしょ?」
「あーまあ…そこらの女子より全てが整ってるけど性格に難ありって感じだな」
確かに…。クキの言う通りだな。
アッシュのような緑かかった茶色の髪は綺麗に前下がりに伸ばされて手入れがしっかりされてると見てすぐにわかるし、身長もすらっと伸びて出るとこ出てるって感じだし、何より顔が恐ろしく整ってる。
ブランドモデルかよって言いたくなるくらい。
あの見かけだ、周りから相当チヤホヤされて育ったその性格なんだろう。
──見れば見るほど気に食わねーな。
“…もういい!言いたくないなら言わなくていいから早く座りなさい!”
“ハッ、めんどくせー。言ったこと変えるなら最初からデカいこと言わなきゃいいのに。そういう大人が一番嫌いなんだよね~”
早速ねじ曲げる形となった担任の言葉は、返された香田からの言葉でやたら大げさに思える。
確かに生意気だけど、こういうヤツって自分の言葉に責任取るヤツが多いから言ってる事は間違ってねーんだよな。
敵に回したら面倒臭いタイプ。
正しくコイツの事を言うんだと思う。
窓の外を眺めたまま腹の中で香田と担任のやり取りを茶化しながら悶々とその場をやり過ごした。
──ついでにあんなヤツと付き合う事になる男が可哀想だとも。
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