転校生は咲蓮(サキュバス)

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転校生は咲蓮(サキュバス)

第一話 転校生はサキュバス 「始めまして。今日からこのクラスで皆さんと一緒に学ぶことになった咲蓮 魔夢(さきばす まむ)と言いう者です。外国暮らしが長く、いたらぬ点もあるかと思いますが、宜しくお願いします」  その女の子は特別な匂いがした。男をも、女をも、引き付ける特別な匂いがした。鼻腔とは違う、体の奥を熱くさせる香り、それは明らかに人間とは違う、異質の香りを持っていた。 「空いている席に座ってくれ」 「はい」  タイトスカートをはいた担任の木内先生に勧められ、魔夢は窓際の席に向かった。身長170センチを超える長身、やや垂れた瞳に、たわわに揺れる胸……。晴矢学園高校の一年B組の生徒たちは、転校生のただ歩くという姿を、目で追わざるを得なかった。  そのなかの一人に長沢明葉(ながさわ あきは)がいた。セミロングヘアーの真面目を絵に書いたようなクラスの委員長だった。  魔夢は明葉に微笑みかけた。彼女の全身から出る香りに、明葉の頬が朱に染まる。  相手は女の子よ……。  高鳴る明葉の胸の音を確かめるように、魔夢はその肩にしな垂れ掛かった。 「咲蓮、大丈夫か?」     
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