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第三話 蛇の根もと
退魔神社の裏山に朝日が昇った。
明葉は制服に着替え、大蛇殺を握り締めると、意を決して神社脇にある家を出た。
晴矢学園の正門の前で男子生徒たちが、半券を手に色めき立っていた。
明葉は立ち止まると男子生徒を呼び止めた。
「何の騒ぎ?」
「咲蓮さんが、一日デート券をクラスの皆に配っているんだ」
「一日、デート券?」
明葉は男子生徒から半券を取り上げると、紙に書いてある文字を読み始めた。
「魔夢ちゃんの一日、デート券。悪魔な私とデートして大人の階段を上らない? もしかしたら、特別な関係になれかも。ハートマーク。なによこれ、破廉恥な!」
淫魔の力を使った学生への堕落行為。明葉は怒りに任せデート券を破り捨てた。
「あっ、ちょっと何するんだよ!」
男子生徒は泣きながら地面に落ちたデート券を集め始めた。
「何その態度? 一度ぐらいの関係で、恋人気取りになられても迷惑なんだけど」
垂れた瞳で色香を振りまく魔夢が人垣を作る男子生徒の間から現れた。微笑むだけで人を惑わす香りがにじみ出ている。
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