転校生は咲蓮(サキュバス)

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 明葉は手のひらで鼻を押さえると、残りの手でスカートのポケットのなかに隠し持った大蛇殺を握り締めた。……やってあげるわ。明葉は平静を装いながら魔夢に微笑み返す。 「そうね。嫉妬していないって言うと嘘になるかもしれない。そのチケット私にも一枚くれないからしら?」 「どうぞ。優先権もつけるわよ」  魔夢はニコリと笑うと、たわわな胸の間にデート券を差し込んで見せた。標準的な胸をした明葉は自分にもできるかなと想像してみたが、素早く我に帰ってみせた。……違う。違う。誘惑に負けては行けない。 「どうもありがとう。放課後、二人でデートをしましょう」  明葉は胸の間からデート券を抜き取り魔夢に差し出した。 「いいわよ。欲張り屋さん」 「ぐっ……!」  怒って見せる明葉を目尻でイジメると、魔夢は腰をくねらせ歩き去って行った。 「なめないでね……!」  明葉は一時間目の授業をサボってコンビニに来ていた。目的はただ一つチョコレートを買い占めるためだ。 「これ全部ですか?」 「えぇ全部です」  レジカウンターのなかで困惑するアルバイト店員に言い切ると、山のような量のウィスキーボンボンを買い込んだ。  洋の東西を問わず、巨大な化物が酒に酔っている合間に、首を狩られた故事は多い。ヤマタノオロチしかり、三国志の張飛しかりである。 「眠らせてしまえば淫魔の力は使えない。その間に決着をつけてあげるわ……」     
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