祖母の愛したこたつ

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予想外に資産家だった祖母の相続権が俺にもあると弁護士から知らされたのは、翌日だった。 ギラギラとした目で見る親戚達に、遺産相続権は放棄することの条件を1つだけ出す。 祖母の使っていたこたつが欲しい。 壊れたこたつを欲しがる俺を、誰もが笑った。 だが、その分、すんなりと事は進んだ。 アメリカに空輸する手続きをして、俺はアメリカに戻った。 帰国後、こたつが届く前に、俺は自分の部屋の床を念入りに掃除し、土足厳禁にした。 畳は敷けなかったが、代わりにカーペットを敷く。 数日後に届いたこたつの変圧器やプラグ交換を電気屋で済ませる。プラグは交換したものの、こたつは修理できなかった。 家に帰るとすぐに電源を入れる。 壊れているはずのこたつは、不思議と冷たさは感じない。 祖母が座っていた定位置に買ってきた座椅子を置き、数日間の滞在で俺の定位置だった場所に座る。 まるでそこに祖母が座っているようで、こたつは温かかった。 「お入り。お互いのぬくもりが感じられて、温かいの。」 そこにはたしかに祖母のぬくもりがあった。
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