祖母の愛したこたつ

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数日後に帰国を控えた夜、祖母の容態が急変し、救急車で運ばれた。 「ここ数日の命でしょう。」 そう言った医者は、痛み止めの薬のみを処方し、祖母の希望通り自宅に帰ることを勧めた。 布団に横になり、意識が朦朧とする中、誰ともわからない名前を呼び続ける祖母。 翌朝、目覚めると祖母がこたつに座っていた。 「タイガ、大きゅうなったの。さぁ、寒いからこたつにお入り。」 心臓がドクンと跳ね、言葉が出てこない。 「さぁ、お入り。みんなで入るとお互いのぬくもりが感じられていいんじゃ。」 よろよろとこたつに入る俺の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていただろう。 「タイガは泣き虫だったかの。男の子は簡単に泣いたらいかん。タイガのじい様は、そりゃあ男らしい人じゃったぞ。」 「ボクハ…タイガデス…アナタノ孫デス…」 「ああ、わしの可愛い孫じゃの。」 「ボクハ…アナタノ…家族デスカ…?」 「当たり前じゃないか。普段会えんでも集まれば家族になれる。タイガは大事な家族じゃよ。 ほら、家族で入るこたつは、一層温かいじゃろう?」 「オバア…サ…ン…。」 とめどなくとめどなく、涙が溢れ、何度も祖母を呼び続ける。 その度に祖母は笑って頭を撫でてくれた。 その夜、何事もなかったかのように祖母は眠りに就いた。 そして翌朝には、旅立っていた。 葬式の準備などで集まった親戚たちによって、こたつは隅に片付けられた。 喪服を持っていない俺は葬式には参列せず、居間で、壁に立てかけられたこたつを眺めている。 あれは夢だったのだろうか。 はっきりとしない意識の中で声が聞こえた。 「お入り。お互いのぬくもりが感じられて、温かいじゃろ。」 誰もいない居間で、俺は声を殺さず泣いた。
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