第1章 高三の夏休み

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海辺佐紀は、御茶ノ水大学附属高校の三年生。部活は音楽部で、同級生の川野未知とロックバンド「チャミズガールズ」を組んでいる。 佐紀が、ボーカルとギター、未知は、ピアノとコーラス、作詞作曲を担当している。 夏休みの今日も、二人で、音楽室の個室で、高校生活最後の文化祭の練習をしていた。 演奏が終わると、佐紀は、 「最後のところ、もうちょっと優しく弾いてくれない?」 と、未知に言った。 未知は、 「これでいいの。最後の8小節は、主人公の心の叫びだから、佐紀こそ、もうちょっと声量を上げてよ。」 佐紀は、 「わかったわ。もう一度、通しでやったら、マックにハンバーガー、食べに行こう。」 未知は、 「いいわ。」 佐紀は、最後の8小節は、激しくギターを弾き、声量を上げて、歌った。今度は、未知の理想通りの演奏ができた。 二人は、高校を出て、近くのマクドナルドで、照焼きバーガーとサラダとコカコーラゼロを食べながら、理想の男性像を話し合った。 佐紀は、 「私は、困ってる人に尽くす弁護士と付き合いたいな。何とか出会えないかなあ?」 未知は、 「私も、逆転無罪を勝ち取るような弁護士に興味あるわ。来年、私達が御茶ノ水大学に入学したら、弁護士と合コンしようよ。私達、イケてるから、弁護士からも好かれると思うよ。」 佐紀は、 「そうだよね。私達、自分で言うのも何だけど、将来のミス御茶ノ水と準ミス御茶ノ水だからね。」 未知は、 「どっちがミス御茶ノ水になるの?」 佐紀は、 「もちろん、私よ。」 未知は、 「えー?私よ。」 佐紀は、 「勝負する?」 未知は、 「いいわよ。」 と言って、得意げに笑った。 二人は、飲食をし終わった後、マクドナルドを後にして、東京メトロ 千代田線の新御茶ノ水駅に向かった。 ホームで、綾瀬方面行きの電車を待っていると、見知らぬ男が、佐紀と未知に声をかけてきた。 「松戸に行くには次の電車に乗ればいいですか?」 佐紀は、 「次に来る電車が取手行きですから、それに乗れば、松戸まで行けますよ。」 と、教えてあげた。 「ありがとうございます。お二人は、高校生ですか?」 未知は、 「はい。」 と、笑顔で答えると、男は、 「私は、こういう者です。」 と、佐紀と未知に名刺を渡した。 「芸能事務所の社長さんですか?」 と、佐紀は驚いた。
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