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「ちょっとだけ、待って下さいね」
家に着くと、私は部屋に入れる前にヤバイものがないか確認した。
いや、もう上がったことあるしいいじゃないかとも思うけど。
まだ、その心の準備が…と思っていた。
下着を確認する。脱毛はこないだ行ったし、多分大丈夫。髪は乱れてるけど、メイクはさっき直した。とりあえずマウスウォッシュして、ルージュを引き直した。
「ねぇ?まだ」
外から悠哉さんがダルそうに声を響かせる。急かされてもと思いながらも、今日の買い物や、部屋のものをさっと片付けた。
「お待たせしました」
5分程で支度を整えて、玄関のドアを開ける。
「どうぞ」
悠哉さんは、頭をポンポンとするといつものように玄関を抜けた。
そんなに緊張することじゃないのに、なんだか今日はいつもと違う。
でも、悠哉さんもそうなのかも知れない。いつものソファーに座る様子はない。
「コーヒーでも入れますか?」
尋ねてみたが、首を振られた。
「舞ちゃんさ、別に嫌じゃないんだよね?」
「何がですか?」
「俺とするのとか…」
髪の毛を掴みながら、少し困った様子でそうきかれると、無性に愛しくなった。
「嫌じゃ…ないです」
言葉に詰まりながらも私は何とか伝えた。
だが、行き場も失い廊下の近くに立ちすくんでいると、悠哉さんがやって来た。
「もう、我慢しなくていいんだよね?」
「あの…やっぱりちょっと待って下さい!!」
悠哉さんは苛立った様子で眉間にシワを寄せた。
「何?」
「来週大事な仕事があって、悠哉さんにネイルして貰えたらなって…」
引かれるかな。
でも、やっぱり悠哉さんのが一番なんだよね。
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