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午前10時。
ドームの入場規制が解かれると同時に、一斉にカップルや子連れの夫婦が入って来た。
ネットじゃあんまりいいウワサのない男女関係。でも、手握りあったり、笑顔で笑ってる姿を仕事柄良くみる私には、表面的にでも幸せを形にしたい人はかなり多い。
美人のキャリアウーマン?
強がったところで笑い合う相手もいない私に、他人が幸せ覚えるはずない。
そう思いながらも、いつも以上に口角に力を入れて笑顔を作っていた。すると、目の前で会場案内を見ながら戸惑っているカップルがいた。
「ご来場ありがとうございます。何かお困りですか?」
さりげなく近付いて様子を伺う。
「あの、このイベントに参加したいんですけど、どのブースに行けばいいのか分からなくて」
甘えたような声で尋ねる彼女。彼氏の方は多分付いてきた感じで、愛想程度に此方に視線を遣ると黙ったままだった。
「此方のイベントは10時半からですので、先にカフェエリアにあるハーブティーの試飲など行かれてはいかがでしょう?
先程入り口で手渡しております、此方にチケット付いておりまして、無料で試飲可能でございます」
「あぁ、じゃあそうします。ありがとうございます」
「いえ。あの本日はご結婚式お考えで此方に来場下さいましたか?」
「いや、したいなぁとは思うけど、何すれば良いのかよく分からなくて」
大体がそんな感じで訪れる人が殆どだ。
でも、だからこのビジネスは成り立つ。
「申し遅れました。私ブライダルアドバイザーやっております、廣田と申します。もし、宜しければ何かお手伝いさせていただければと思いますが、本日ご都合のつく時間帯などございますか?」
売り上げに貢献する、それが一番の醍醐味。
「あぁ、でもまだ本格的には・・・」
「はい、それは皆様そうおっしゃる方も多いんです。だからこそ、真剣に考えていただくきっかけになればと思いまして、是非良ければ彼方の相談コーナーで、無料で式場やドレスサロンについてもご案内しております」
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