232人が本棚に入れています
本棚に追加
その途端、男が凄い形相で此方に振り返って走って来るのが見えた。
左手のペディーナイフの輝きに目を奪われた瞬間、恐怖で私はしゃがみ込んだ。
ど、どうしよう!!すぐ立ち上がれずにいると、パーカーの男が転がって来た。
「舞、どけ!!」
崇さんの声が降って来る。暫くして目を開けると、警備の人や崇さんが男を取り押さえていた。
「誰か警察連絡して」
「そっち右押さえろ!!」
悲鳴が聞こえた。場が騒然とする中、震えて立ち上がれない私の前に赤い血の雫が一滴染みを作った。
恐る恐る顔を上げると、崇さんが血の気をなくした表情で私のことを抱きしめてくれた。
「舞、無事か?」
「だ、大丈夫。でも、あなたは…」
そういった崇さんの右腕からは、スーツの袖から赤い血が滲み手の平は真っ赤だった。
最初のコメントを投稿しよう!