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通報してすぐに警官は来たようだった。場外だったこともあり、思ったより騒ぎは大きくならずに済んだ。
スタッフの賢い判断で一時的に出入り禁止にしたのが功を奏したようで、場内のアナウンスで混雑を防止したらしい。
私は崇さんと、医務室に向かった。が、止血はしてみたものの、救急車が来るまでは辛そうな表情で耐える彼の側でじっと左手握ってあげることしか出来なかった。
「痛くない?」
「まぁ、何とか…」
嘘だ絶対。空手は有段者だったけど、刺されて痛くない人間なんていない。
「でも、どうしてあいつナイフなんか持ってるって気付いたの?」
「真中のストーカーがいるってのは耳にしてたし、カメラの扱いが雑で」
そう言うと、彼は頭を項垂れて私に寄りかかって来た。
「舞に何かあったらとか…フェスタ中止になったらとか考えて頭真っ白になった」
「バカね…」
「いやだったんだ。舞が傷つくのもフェスタだって、あんなに頑張って企画してたのにって」
私は崇さんの頭を抱えた。
「救急車一緒に乗ろうか?」
「ダメ!!お前だって責任者なんだから明日、無事に終わらせるまでは、気…抜くなよ」
最後の方が擦れて聞き取れなかった。
彼の唇が青ざめていくのが、怖くて私は離れられずにいた。
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